初夏の風もすがすがしい季節になりました。4回生の佐藤です。皆さん元気でお過ごしですか。
ひと月ほど前のお話になりますが、2022年4月16日に沖縄へ水族館建築の視察に行ってきました。視察した水族館は訪れた順番に、DMMかりゆし水族館、沖縄美ら海水族館、宮古島海中公園です。
DMMかりゆし水族館は2020年にオープンしたばかりの水族館で、那覇空港にも近く、ショッピングセンターと隣接している都市型の水族館です。館内は水族館でありながら水槽ばかりというわけではなく、その水生生物がすんでいる地上の環境をモチーフとした装飾にこだわっていたり、遊び心のある映像演出があったりと今までの水族館とは一味違う最新水族館という感覚を覚えました。
沖縄美ら海水族館は来場者数日本一の水族館です。沖縄という本州の大都市から離れた県で、さらに那覇空港からも車で2時間以上かかってしまうところに立地しているのにも関わらず日本一の来場者数を誇っている点からも人気の高さが伺えます。有料施設はもちろん見ごたえがありますが、その他無料施設も標本展示があったりとこちらも見ごたえたっぷりで時間が許せば数日消費できてしまうくらいの見ごたえと規模でした。
宮古島海中公園は水族館を呼んでいいのかわかりませんが、宮古島の豊かな海の中に入って、実際にそこにいる自然の状態の水生生物を見ることができる施設です。水族館の展示はいかにして自然の状態を再現するかというのを課題にしていますが、この宮古島海中公園はいっそ本当の自然を展示物としてしまう逆転の発想をした水族館です。あえて施設自体の藻を掃除せずに自然の餌場にしたり、台風などの災害に備えてガラスに傾斜をつけたり、頑丈な蓋ができるようにしていたりと、この水族館ならではの様々な工夫が見られてとても勉強になりました。
各水族館について語っていたら日が暮れてしまうので簡潔にまとめましたが、ここでは記載できなかった部分も多くの魅力や学びがありました。今回はその中で一つ紹介したいと思います。
沖縄美ら海水族館では、水生生物の生体展示をするだけでなく、水生生物の生育環境を脅かす環境問題についても紹介しています。下の写真は実際に美ら海水族館内で撮った写真です。ここでは海洋ごみを誤飲したり、体に絡まって動けなくなってしまったりしたことで亡くなって浜辺に打ち上げられた実際のウミガメの写真が展示されていました。
大学生活の中で約20もの水族館や水生生物を展示する施設を見てきましたがこういった海洋ごみ問題について触れる水族館は少なくはありません。しかしながら、ここまでショッキングな写真を大々的に紹介しているところは自分が知る限りここだけでした。このほかにも以下のように海洋ごみ問題に警鐘を鳴らすコーナーが設けられていました。
今このブログを読んでいる時間も海洋ごみは排出され続け、海を汚し、水生生物の生命を脅かし続けています。中でもプラごみは自然環境下で分解されにくく、細かくなったプラスチックが魚などの生物の体内に入り、生物濃縮によっていずれ人間にも害を及ぼす可能性があるという「マイクロプラスチック問題」も近年注目されています。海洋ごみ問題を改善すれば、水生生物の生命が脅かされることもなくなり、われわれ人間にもプラスチックの蓄積による健康被害が出ることをなくすことができます。海洋ごみ問題は水生生物だけが危険に晒されているという認識の方が多いように思われますが、人間も例外ではないということは肝に銘じるべきだと感じました。
SDGsの目標14にも「海の豊かさを守ろう」とあるように海洋ごみ問題は世界が一丸となって取り組んで解決するべき問題だと思います。水生生物を保護、研究、展示する水族館という施設はとくにこの問題には真剣に取り組むべきだと思っています。しかしながら、このような環境問題を訴えるコーナーを設けているのは昔ながらの水族館ばかりのように思います。最近オープンした都市型の水族館にはこのようなコーナーがないところばかりでした。正直このような環境問題は直視したくないし、これらに関するコーナーを作るよりも水槽展示やお土産コーナーを充実させた方が利益に繋がります。このまま、環境問題に警鐘を鳴らす水族館が減ってしまうと危機感を感じる人も減ってしまい、悪化の一途をたどるばかりになってしまうと危惧しています。今一度、水族館という施設の意義を見つめなおし、環境問題を解決に導く切り札としての存在になってほしいと願っています。