聴竹居へ行きました

こんにちは。今年金子研究室に配属になりました、B3の沈真理子です。これから様々な学びを吸収できるように、頑張ります。よろしくお願いします。

研究室配属が決まり1ヶ月弱が経過した先日、さっそく研究室の調査に同行し、「聴竹居」に訪れる機会がありました。今回はその時に感じたことについて書きたいと思います。

「聴竹居」とは京都府の山崎にある、藤井厚二が1928年に建てた自邸です。現在は竹中工務店が所有し、重要文化財の指定を受けています。日本の気候風土に合わせて自然の力を巧みに利用することで、環境との共生を図った名建築です。

私は金子先生の授業で耳にしたことがあるくらいで、聴竹居についてほとんど無知の状態で訪れました。南彦根駅から電車で1時間ほどのところにある山崎駅で降車し、5分ほど歩くと三角屋根のおうちが見えました。

写真撮影を行ってから、たなべさんという聴竹居の管理を行っている方のガイドを受けながら見学がスタートしました。まず、閑室とよばれる離れのような空間に案内されました。この空間は藤井厚二がプライベートの空間を楽しむためのもので、藤井厚二のこだわりが詰まっていました。例えば、聴竹居は平面計画として南北軸に対して45度振って設計されているそうですが、驚くことに、その手法に合わせて、照明も同じ方向に45度振ってありました。また、どの照明も多方向に光が落ちるように工夫されています。木材の温かみが感じられるデザインで、光が柔らかく広がっている様子が心地良かったです。

次に、聴竹居本屋に案内されました。本屋で一番大きい居室に入ると、まず広さを感じました。そこにも藤井厚二の工夫が光っていました。まず、天井にある3つの照明の大きさがそれぞれ違います。手前のほうが大きく、奥にある照明は小さくデザインされています。遠近法の仕組みを使って視覚的に広く見える工夫がされていました。

また、閑室・本屋の各所に夏を快適に過ごすための工夫がなされています。現在ではデジタルのシミュレーションを用いて、空調を考えることが可能ですが、そんな技術も全くない時代に設計されたとは思えないほど、設計の計算通りに涼しい空間が出来上がっていました。

随所にちりばめられた工夫の数々は、よくそんなことに気づくなあと驚きの宝庫でした。本当に細かな、少しの工夫の積み重ねが、最終的に心地の良い快適な居住区間を作り上げていると感じました。生活を重ねると、ドアの開き方の向きであったり、棚の角であったり些細な引っ掛かりが気になってくると思います。聴竹居は設計の段階から生活の引っ掛かりがないよう、「居心地の良い暮らし」が追及されており、生活への配慮とこだわりが詰まった建築であると感じました。

この建築は日本の気候風土に即した住宅を作るにはどうすべきか、と考えられた「実験住宅」であり、藤井厚二の研究の集大成とされています。しかし、私は見学を通してそのような堅苦しい響きは微塵も感じられず、家族への配慮と愛に溢れた建築だと感じました。

藤井厚二は聴竹居で10年暮らし、49歳の若さで亡くなりますが、もしもう少し長生きしていたらどんな建築を生み出したのかなと思いを巡らせながら帰りました。

今回聴竹居を訪れて、住宅設計について学んだと同時に、資料を読むだけではなく実際に場に訪れて自分の五感で感じることの重要性を感じました。また、ガイドのたなべさんの語りが素晴らしく、聴竹居について深い部分まで知ることができ、より一層貴重な経験になりました。

これからも様々な建築に実際に訪れて、自分の五感で感じることを大切にしたいと思います。金子研究室では、そういった機会がたくさんあると思うので積極的に参加したいと感じました。