純喫茶から考えるアンビエント

こんにちは、M2の山田です。

先日、カフェー巡りに京都へいってきました。

多くのカフェチェーンでは、隣席の話し声を緩和するための店内BGMやプレーンな内装などにより、滞在者は会話、勉強、PC作業等、何をしていても自由となります。(コーヒーなどの購入をしていれば。)

しかし、カフェー、特に純喫茶は喫茶を目的としているものですから、なるべく喫茶に専念してほしいのです。名店と称される純喫茶群はそれぞれの哲学をもって、この目的を達成しようとしています。ここでは先日訪問した2店舗を紹介します。

①喫茶ソワレ

店内がブルーの照明につつまれており、他にはない空間をつくり出しているソワレ。ソワレとはフランス語で夕方を指す言葉です。店内に疑似的に(想像上の)夕方をつくり出すことで、夕方での喫茶を常に提供しています。よく見ると、夕方への導入は外観から始まっています。テントと瓦の色には深緑色を使用しています。光の波長的に緑と青は隣り合った色であるので、都市から緑の外観でワンクッション挟むことで、夕方喫茶へのストーリーを各個人の中に醸成する効果があると考えられます。

また店内BGMを意図的に排除することで、空間に集中できるように計画されています。

②築地

煉瓦や装飾の多い家具の配置された内装は、ヨーロッパの古城のようです。また、店内BGMではロマン派のクラシック音楽が中~大音量でかけられており、会話にも少しかぶってくるほどです。しかし、その主張は喫茶と化学反応を示します。甘味と共に珈琲や紅茶を飲むように、ロマン音楽と共に喫茶をする楽しみを教えてくれます。

このように、照明や音響が特徴の一つになっている純喫茶の事例をみてきました。これらは写真には写らない要素でありますので(照明もよく工夫しないと実際に感じる印象と写真で撮る印象は大きく違う)、建築、建物を語る場合に除外されてしまう場合が多いですが、とても大事な要素であると改めて感じました。空間デザインにおいてこれらを「アンビエント」としてしっかりと位置付けることによって、より経験者、利用者に感動を与える設計ができると思います。それと共に、空間デザインには計画の線では現れてこない道具や素材の持つ機微が重要であるということを述べさせていただきます。

昨今また、レトロブームが熱を帯びています。このムーブメントは「ここではないどこか」としての懐古趣味が大きな原動力であると感じています。古くて良いものを現代文化の対比として評価するのと、残っているものとして現代文化と同等に評価するのとでは見え方が随分変わってくるのではないかと思います。そういったレトロなものを同等に評価するためには、「普段使い」のようなまなざしが求められるのではないかと思います。

京都にはたくさんの純喫茶群がありますので、ぜひ純喫茶を普段使いしませんか?