こんにちは。初めて投稿させていただきます、B3の寺下です。
現在、私たち金子研究室では、2月15日から開催する「建築図面展 VORIES -窓と光の対話 窓から読み解くヴォーリズの思想」の準備をしています。再来週に迫り、最終の追い込みの段階に入っています。
私はその展覧会の代表をしており、全体的な計画のまとめをしています。今回のブログでは、この展覧会を計画するにあたって考えてきたことを、少し遠回りしながら、まとめていこうと思います。これがトークイベントの台本になることも含めて…
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今回の展示では、ヴォーリズの建築図面をデジタルアーカイブ(写真撮影)したものを、プロジェクターで投影します。その性質上、展示室を真っ暗にする必要があります。つまり、ヴォーリズ建築の特徴である窓に暗幕を覆い被せる必要があるのです。「窓の光の対話」と題しておきながら、窓を閉めてしまう矛盾。
思えば、美術館において展示室には開口部を設けることは基本ありません。作品の保護とか、鑑賞の邪魔にならないようにとか、そういう理由のためです。しかし、私たちはその展示室において、窓があるかのような解放感を感じていると思います。
それは絵画です。額縁が窓枠となり、絵画が景色となる。窓を取り付けなくても、絵画がその役割を果たし、その向こうに展示室以上の広がりを思わせる。展示計画を始めてから、そのようなことに気づきました。
今回の展示室における窓とは、ボードであり、模型であり、図面であります。実物の窓を、全て暗幕で閉じてしまっても、私たちはきっと、プロジェクターで投影される図面や写真に、窓のような求心力を感じてしまうと思います。
もう一つ、「窓のような求心力」ってなんでしょうか。
どこでもドアってありますよね。22世紀まであと70年余りですが、それがいつか実現するとして、仕組みとしては、以下の図のようになるらしいです。物理の専門ではないので、詳しいことはよく分からないですが、納得のいきそうな仕組みだと思います。これには哲学的な問題が大きく関わってくるのですが、それはまた別の話で…
出発地の「今いる世界」と目的地である「向こうの世界」-その間のドアの厚みの分だけ、「どこでもない世界」があります。そこは四次元的な空間ではあるんですが、だからと言って遥か未来の技術で作られる空間ではないと思います。現代の技術でも作り出せる空間、いや遥か昔から、そのような空間は作られてきたのではないでしょうか。
当然ですが、建築の壁にはそれだけの厚みがあります。窓などの開口部によって、その厚みが明らかになり、その分だけ、内でも外でもない世界が設けられています。白須さんのポストを例に例えるなら、コロッセオには3メートルもの四次元空間が、逆に梅林の家では1.6ミリしか四次元空間が設けられていません。この不思議な空間に、人間は求心力を感じるのではないでしょうか。
先日、見学で訪れたGood job! センター香芝にも、窓辺に気持ちよさような場所がありました。四次元というと、大げさに聞こえるかもしれませんが、きっと、どの窓にもこんな気持ちよさがあるはずです。
話を展覧会に戻すと、その窓辺の気持ちよさを展示したいな、という思いがありました。もちろん、ヴォーリズの窓というものは、それだけでも求心力を持つ素晴らしい建具です。でも、その部屋を使って展示をするのならば、ちょっと変わったことをしてみたい。そう企み、ふとタイトルに戻ると「窓と光の対話」とありました。
このタイトルには、ヴォーリズが設計した窓から、どんな光が入るか。その光との対話を通して、ヴォーリズの思想を読み取ろう、という意味が込められています。しかし、光と対話するなんて、余程の感性がないと、難しいと思います。そこで、窓辺に対話を促す仕掛けを作ることにしました。
カーテンにヴォーリズの遺した言葉を記し、窓から入る光を通して言葉を、その四次元的な空間で感じる。その一連の流れが対話を促すのではないか、という風に考えました。日時や天気によって、その言葉の受け取り方が変わる、面白い展示だと思います。
これも、ヴォーリズの窓を覆ってしまう展示ですが、言葉との重ね合わせによって、新しいヴォーリズ建築の価値や見方が生まれるのではないかと、信じています。
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ここまで駄文を読んでいただき、ありがとうございます。是非、展覧会にお越しいただき、これらの目論みの結果をご覧いただきたいと思います。正直、このブログを書いている時点では、イメージがまだ朧げですが、ヴォーリズの建築に負けない素晴らしい展示になるよう、日々頑張って準備を進めます。